
「曲学阿世の輩」
著者サミュエル・ハンチントン氏はハーバード大学で教鞭をとった国際政治学の権威であった。本書の骨子である「次の大きな世界対立は、異なるイデオロギーの間にではなく、異なる文明の間に起こる」との思想は、ジョージ・ブッシュ前大統領のイラク戦争の理論的基盤となったとも言われる。そういう、世界的に影響力の大きな人物が、日本の進むべき道にも言及しつつ書いた本であるから、「これは読まなくては」と思って読んだ。
結論から言おう。かなり内容的に粗雑な本である。キリスト教文明とイスラム教文明とはその発想・歴史とも根本的に異なるのだから、相互理解は容易ではないが、それを初めから無理であるとあきらめ、理解し合えない以上戦いになる、これに備えよ、というのが「骨太な保守の論客による現実的な政治認識」だというなら、何をかいわんやだ。ハーバードの論客といっても、その思想はとても考え抜かれたものとはいえない。現在、アメリカの頂点にいるあの人傑(バラク・オバマ)は、このハンチントン氏の世界観とはきっぱり決別していると解される。(だからこそ、9・11の現場近くにイスラムのモスクを建てることを許したのだろう。異質な文化や人種を許容することこそがアメリカの強みなのだ、というオバマ氏の哲学は、その著書「合衆国再生」にも明らかだし、ことあるごとにその演説でも述べられてきた。私はこのオバマ大統領の発想に垣間見える、相互理解に向けた前向きな姿勢こそが世界を正しい方向に導くものと信じる。)
日本の進路については、本書でハンチントン氏はこう述...
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